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目の前に立つのは黒い狼。
息を弾ませて額の汗を袖で拭う。
戻ってきた真由がわんわん泣いて転がったままのわたしに抱きついた。
「真由?」
「この女がいなかったらどうなってたか!」
「……千嘉」
「無茶しやがってバカヤロが!」
何が起こったのかわからない。
わかるのは襲われる寸前で千嘉と真由が飛び込んできてくれたこと。
「……千嘉?どうして」
「おまえが襲われてるから助けてって裸足で」
「裸足?」
真由の足は土だらけだった。
「俺がいなかったらおまえ」
涙が出た。
今頃震えてくるなんて。
千嘉の顔をみたら急に。怒鳴られたのに温かくて込み上げてくる。
パタパタ
身を起こすと次々と涙が頬を流れて落ちた。
「……こわ、かった」
「おまえ」
「……こわ、」
「みるく」
名を呼ばれただけで胸が苦しくなる。
千嘉が助けてくれた―――
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