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―――あの花火大会の夜から5年
章広さんと再会してから2年。
わたしは結婚式を2ヶ月後に控え忙しい日々を送ってる。
「痛っ!」
浴衣を縫っている指に針が刺さり赤い水玉がぷつりと浮いて出た。
その指を舐めて目を閉じると今までのいろんなことが浮かんでくる。
何度も眼の手術をした章広さんを支えたこと…
わたしのアメリカ留学や短大卒業、そして大神組を揺るがす事件があって結婚式が遅れたこと……
全部。
章広さんと一緒にいたからこそ乗り越えてこれた……
一針、また一針と一緒にいられますようにと願いと祈りを込めて章広さんの浴衣を縫う。
突然に別れを告げられた花火大会の夜から5年―――
今のわたしはとても幸せであるはずなのに、それなのに。
なぜか寂しい……
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