1-コーヒー店・Rufellvia

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 リタが、レイの頭を優しく撫でた。 「そうか、そうか。偉いな~、レイ」  レイは、恥ずかしそうに笑った。 「これで、足りる?」  ズボンのポケットから、財布を取り出す。青い色をした、小さな丸い形の小銭入れを両手に乗せて、レイはリタに差し出した。  ジッパーを開けてみると、紙幣が2枚と高額の硬貨が数枚入っていた。 「お?レイ、金持ちだなぁ」  リタがびっくりして言った。お世辞ではなく、本心だ。  レイは、それを聞いて得意気に笑った。 「おこづかい使ってないもん。ねえ、足りる?」 「うん、お金は十分足りるけど、ママは?ここに来たこと、知ってんの?」 「内緒だもん。ママにも淹れてあげるんだよ。僕1人じゃ、買えない?」 「そんなことないよ~?向こうのテーブルで待ってな?今、店長がイイの選んでくれるから」  嬉しそうに頷いて、レイは、リタに言われた通りにテーブルへ駆けていった。  カウンター裏から、店主が豆を選びに姿を現す。 「風邪にコーヒーねぇ……」  店主が、クスクスと喉の奥で笑う。 「いーじゃないですかぁ。子どもの精一杯の気遣いですよ」 「犬も喰わないって言うけど、子どもにしてみりゃ、一大事だからなぁ」  2人の会話を他人事のように聞きながら、テンは、カウンター裏からレイを見やった。嬉しそうに、店内をキョロキョロと見回す、小さな少年。 「健気だよなぁ?」  いつの間にか、店主は挽き終えた豆と共にテンのすぐ横にいた。  カウンター席から、リタもテンをじっとみつめていた。 「パパとママの夫婦ゲンカの仲直りを密かに計画するなんて、なかなかできないですよねぇ~?」  意味深な2人の笑みが、テンに突き刺さる。  彼らの意図を察して、テンは、顔をしかめた。 「そうですね……」 「ほら、見てみろ?」  店主が、テンの肩に手を回して、レイを指差す。 「何でしょう?」 「何かこう……哀愁漂ってるよなぁ、あの横顔」  わざとらしい店主の口調を、テンは、軽く流した。 「気のせいですよ、店長」 「なぁ、テン~」  情けないリタの声に、テンが目を向けると、両手を祈りの形に組んで、こちらへ懇願の視線を送っている。 「一生のお願いっ!な?」 「お前、何回一生送る気だよ……」  今まで飽きるほど聞いたこの台詞。テンは、呆れてため息をついた。 「な?テン~。痛めた小さな心を癒してあげたいだろ?な?な?」
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