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そのとき、教室の外から「オーイ、水掛」と声がかかった。教室のドアの前に、1組の男女が立っていた。
「何ですか」
隠冬は席を立ってそこに向かった。
「いて良かった。水掛、来月の当番表ができたから渡しておくぞ」
隠冬にプリントを渡したのは、2―B在籍、美化委員の先輩、六条倉芳である。5月にこの学校に妹と転校してきた。
その横にいる倉芳の妹というのは、隠冬と同じクラスの六条浄美。廊下の窓の向こう側に飛んでいるカラスを眺めている浄美を見て、思わず、高校のパンフレットに載ってそうな画だと思ってしまった。これから地平線に戻ろうとしている夕日が彼女のショートヘアと白いセーラー服を紅色に照らし、優しそうな目が飴玉のように輝いている。隣にいる倉芳はどうかというと、浄美に引けを取らないような男だった。
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