12人が本棚に入れています
本棚に追加
浄美がふと窓から目をそらした。その時、隠冬と目が合う。彼女は、笑顔を作ると軽く手を振る。隠冬も同じように返した。そして浄美はまた窓のほうに向きカラスを眺め始めた。
1か月前、5月というかなり微妙な時期に兄と一緒に転校し、隠冬のクラスに来た浄美。クラスメートの多くが、転校時期の問題もあいまって何か問題を抱えている兄妹かと思ったのだが、彼女の笑顔はその日のうちになじみ、たちまちクラスの人気者になった。
そしていつの間にか学年全体で話題になっており、「美男美女兄妹」ともてはやされていた。2人に言い寄る者はかなりいたのだが、お互いに守り合っていたおかげでこの二人に関する浮いた話は1つも出てこない。わずか1か月で「普通の人では付き合えない存在」になっていた。
浄美はクラスではいつも女子の輪の中心にいて、男子からはあがめられていた。
隠冬自身も、彼女は素晴らしい人間だとは思っていたが、少し不気味だと感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!