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「わたしにとってのあこがれは、浄美ちゃんだよ」
第1車両がホームに入ってきている。
「どうしたの。誰かに何か言われたの?」
浄美が少し顔を上げた。彼女の唇が髪の毛の中から垣間見える。
「なんで相談してくれないの」
陰に隠れていた浄美の目が、彼女のほうに振りかえるショートヘアの女子の顔を映し出す。
微笑んでいた。
その顔は慈愛に満ちていて、まるで背後から光が差し込んでくるような美しい笑顔だった。その顔の美しさに突き動かされたかのように、浄美の唇が動く。
「さゆり」
……どん。
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