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隠冬は逃げ道の中間地点である自分のクラスの教室のドアを勢いよく開けた。
誰もいなかった。聞こえるのは隠冬の荒い息のみ。
急に、孤独になってくる。隠冬は思わず体をブルッと震わせた。もう、下を見ることしかできない。
この気持ち、どうすればいい。対処の仕方を教えてくれ。隠冬は、大きいため息をついた。
六条兄妹に魅花が殺される。しかも自分が彼女に告白した場所で。自身が知り得た情報を並べる隠冬。
魅花が殺されることを想像すると、目がだんだん見えにくくなってきた。目を、何かが満たしていく。彼女が殺されるのは分かったが、どう防げばいいかわからない。そう思うことでまた目が見えにくくなっていく。
目という小さな池では彼の涙をとどめておくことができない。
結局一粒目の涙は外に流れてしまった。その時。
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