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俺は、その仮面を思わず拾い上げた。
それが持つ顔は記憶の中にある六条浄美の顔そのものだ。黒色のショートヘア。優しそうな笑顔。安らかな閉じた瞳。
「うわ!」
思わず俺は叫んで仮面を地面に叩きつけた。仮面の右頬が少し歪む。一瞬申し訳ないと思ったが、結局は恐怖に支配されてしまうだけ。
まず恐ろしかったのが、六条浄美の顔を持つ仮面が自分の傍に急に現れたこと。生きている人間が仮面になることなんてありえない。でも現にここにある。だが、それ以上に恐ろしいことがあった。
こんな優しい顔をしている彼女が魅花さんを殺そうとしていることだ。恐ろしいやり方で。しかも倉芳さんまで加担しようとしている。
何でだ。何でお前らなんかに殺されなきゃいけない。何で邪魔されなきゃいけない。
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