第3話 瞳がはなしかけてくる

3/12
前へ
/70ページ
次へ
 ちょうどその頃、生物実験室では、六条兄妹が話を続けていた。 「じゃ、倉芳、協力よろしくね」 「浄美、今は学校だぞ」 「あ。『お兄ちゃん』だよね。えへへっ」 「あれ、今日お前、【柚子】の仮面被ってるのか」 「冗談やめてよ、『兄さん』、真似をしただけだって。今日は普通の日だし、【さゆり】以外つけてないよ」 「そんなこと分かってる」 「それより兄さん、やっぱり水掛君って【梢】に似てるよね」 「似てなくね」 「いやいや、似てるって。目とか鼻とか、パーツ単位で。」 「あれからもう二年か。……あ、そういえば」 「そう。今回仮面にするのは水掛君の彼女なんだよ。水掛君には申し訳ないけど、しょうがないよね」 「水掛はいい奴だったんだけどな。かわいそうに。確か初めての女じゃないのか。お前みたいな奴に初の彼女が殺されるなんて。ああかわいそう」 「もう、兄さん。そうやって人の罪悪感くすぐるのやめてよ。ハハッ」 「罪悪感なんてねぇくせに」 「あるある」  彼女は、笑いながらそう答えた。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加