第3話 瞳がはなしかけてくる

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 時を同じくして1-Dの教室。隠冬は手に持った仮面をじっと見つめていた。  仮面は普通、目の部分に穴が開いてるはずだが、この仮面にはない。完全に閉じた仮面の瞳が、誘惑してくる。私を被れと。隠冬はつばを飲んだ。隠冬は恐る恐る仮面の眉毛をなぞる。自分の眉毛と同じくらいリアルだった。  次に、先ほど地面に叩きつけたせいで少し歪んでしまった右頬を強く押した。ここで隠冬は眉をしかめた。その仮面が奇妙な柔らかさを持っていたからだ。まるで粘土のような柔らかさ。仮面は固いものだと決め込んでいた隠冬は、柔らかいものの奥に何か固いものがあるかもしれないと考え、柔らかい部分をはがしてみようと力を指に込めた。  だが、力のかけ方を間違えたのか、仮面を床に落としてしまった。  裏側をさらけ出す仮面。隠冬はそれを拾おうとしたが、仮面の裏側に描いてあるものを見て思わず大きく目を開いた。
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