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ここはどこだ。まず、隠冬はそう思った。
目の前にあるのは、相変わらず黒。真暗闇。
どうしたらいいのかわからなかったから、やることは一つ。
隠冬は仮面の両端を両手でつかむと、思い切り引きはがそうとした。もちろん仮面は取れない。鋭い痛みを感じたところで諦め、いらついて思わず床を蹴った。
床は畳だった。
そのことに気づいた時、またあの声が自分の中に響いてきた。
(そんな無駄なことしてる暇があるんなら、僕に協力してくれないか)
もちろん、得体のしれないものに協力する気は隠冬にはさらさらなかった。教室にいたときまでは。だが今はもう何でもいいから自分がどこにいるのかを確かめたかった。
「わかった。協力する。その代わり、俺の視界をどうにかしてくれよ」
(了解)
「え、何とかなるのか」
(ああ)
「じゃあ、早くはがれてくれよ」
(いいや、僕ははがれないぞ)
「は?」
(とりあえず、僕の言うとおりにするんだ。まず、仮面を触れ。柔らかいだろう。まるで、粘土のように)
「ああ、柔らかい」
(うん。その柔らかい部分を取り除いてくれ。取り除いていくと、固いものが残るはずだ)
柔らかい部分を取り除いていくと、左親指が固いものにあたった。それを機に速度を上げると、どんどん、柔らかいものが取り除かれていく。
しばらくすると、光が差し込んできた。と言っても、本当に微弱な光で、どうやら隠冬がいる部屋の電気はついていなかったらしい。それでも、隠冬はほっとした。しかし、仮面に対する不安はなくならない。
「おい、仮面。俺をどうするつもりなんだ?」
(まあまあ。それより、そこの箪笥の上に鏡が置いてあるから、部屋の電気をつけて自分の顔を見てみろ)
隠冬は思わず首をかしげたが、それでも、仮面から響く声に従った。
電気をつけて鏡を見る。これは、誰でもすることだ。隠冬にとってもそうだ。
だから、隠冬は度肝を抜かれる準備はできていなかった。
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