最終章 放出されゆく

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伝えられた言葉に先ほどまで笹川の手元へと向けていた視線を動かし笹川の顔を見る。 「...解放ですか? 」 見据えるように見つめた先の笹川の瞳と視線が合わさればすぐに目を逸らされた。 桐島は志免に言われていた内容を思い出し小さく口に出してみる。 「...飽きたと聞きました」 「違う! 」 間髪入れずに顔を上げ叫んだ笹川の顔は眉間にしわを寄せ苦しそうにしていた。 「...これ以上はもっと酷い目に合わせてしまうと思ったんだ」 かつて自信満々に聞こえていた低い声は今は覇気がなく弱々しい。 「先生が...あんたが他の奴を呼ぶ度に怒りが収まらなくて怖くなった」 またもや俯く笹川。桐島には目の前の男が酷く小さく見える。 「だからもう、終わりにしないとって思ったんだ」 胡座をかいた足に肘を乗せ項垂れる頭を支えている。 「だ...だいたい、はじめからそんなに長くあんたと関係を持つつもりじゃなかったんだ...」 「...笹川くん? 」 「でも…どんどんあんたに嵌って」 「気づいたら全然自分をコントロールできなくなってた」 俯く笹川が己の髪の毛をくしゃりと掻きあげる。 僅かに震える声が桐島に届く。 「あんたを前に冷静になんていられなくなってたんだ」 目の前の顔の見えない笹川を見つめる桐島。 『...僕が追い詰めたのかな』 胸の奥で罪悪感が広がった。
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