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桐島の掠れた声は小さく、聞こえたか不安になったが返ってきた返事により届いていた事に安心する。
「残ってちゃ駄目でした? 」
低く静かな声が教室の闇の中で響く。
「あっ...いえ...そんなことは...」
まさか、そう言われるとは思っていなかった桐島。
小さく首を振り否定すれば笹川の指先が桐島の露わとなっている腕にそっと触れる。
「っ...」
桐島は自分の体の状態を見ることはできなかったが、その痛みから笹川が触れた部分に青アザか、噛み跡があったのだろう。
小さく呻いた。
そんな桐島に向かって話しかける笹川。
「先生は...」
「...先生は動けるんですか? 一人で帰れるんですか? 」
桐島に触れた手を自分の元へと戻し、桐島を見つめる。
「えっ...いや..時間が経てばそれなりには」
自分を見つめてきているであろう笹川の視線が強くてそっと瞳を逸らしてしまう。
その後もじっと見つめてくる視線が何やら呟いた。
「....い..ます」
「えっ? 」
きちんと聞こえなかった桐島が聞き直せば笹川が今度ははっきりと言った。
「...先生を送って行きます」
何故そんな事を言われているのかよく分からない桐島は笹川を見上げたまま呆然とするしかなかった。
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