最終章 放出されゆく

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『志免も俺も先生に無茶させました...すみません』その言葉に桐島はゆっくりと肩の力を抜いていく。 目の前のうな垂れた姿に言葉をだせない。 「......」 未だ、痛む体を感じながらも静かに笹川の言葉を待った。 「....こんなつもりじゃなかったんだ」 ポツリと漏らした言葉に視線を笹川に向けると、俯いた状態の中、垂れる前髪から覗く口元が悔しそうに唇を噛んでいるのが見える。 「先生をボロボロにしたかったんじゃないんだ」 余りはっきりとは見えないが、きっと笹川の端正な顔は歪んでいるだろう。 「でも、他の奴の名前呼んでるのを見てたらムカついて...」 「...別の奴と一緒にいるところ見たら怒りが治んなくて」 聞こえてくる声は少し震えて桐島の鼓膜に伝わる。 「...だから..その、飽きたとかじゃなくて」 ふと笹川の体で小さく動くものが見えて目を凝らす。 笹川の握り合っている手が皮膚にめり込むほど力強く組まれており、更に力を加えていた。 その手元に視線を向けていた桐島。 「もう先生を解放しようって思っただけなんだ」 視線を感じ顔を上げた桐島にそう呟いた。
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