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暗闇で項垂れる笹川の肩にそっと桐島の手が触れる。
『顔を上げてください...』と言ってきた桐島のその優しい声色に、笹川はついと顔を上げれば『...終わりにしましょう』と残酷な言葉を告げられた。
小さい声ながらも教室に響くその声に笹川は目を丸くして桐島を見つめる。
「...終わり..? 」
己の口から漏れてくる声にはいつからか覇気がなく情けなさが滲み出ている。
「.........」
自分の中でも既にあった選択肢である。
『そうするべき』事項である事を笹川だってわかっているのだ。
目の前の桐島は笹川を見つめており、意見の肯定を待っているように見えた。
何が最善なのか頭では理解できている。
『脅迫』で成り立つ歪んだ関係に先は無く。
『執着』と云う感情は恋愛とは程遠い所詮利己主義的な想いだ。
あの『嗜虐欲』が満たされたのだって只の快楽の延長でしかない。
そんな笹川の独りよがりな感情を前に何が正しいのか理解はできるのだ。
コレは決して『恋』などと呼んではいけないモノ。
どこまでも理解できている頭と胸の奥で燻る感情に酔いそうになる。
嘔吐きそうになるのを堪えながら何とか口に出すことができた。
「お、終わりに..する........」
しかし瞬間、吐き出した言葉と同時に桐島の手首を掴むと笹川は手繰り寄せその華奢な体躯を抱き締めた。
「...さ..ささかわ.くん? 」
「...ちゃんと..おわり..に..するから」
顔を桐島の肩口に埋めながら呟く。
喉元が震えているのか、自分の声に僅かな浮動を感じた。
頭も心もきちんと言う事を聞くのに体だけが笹川の言う事を聞かずに勝手をしてしまう。
桐島を抱き締め、顔を埋めながら笹川はそんな事を思っていた。
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