最終章 放出されゆく

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今、腕の中にいる小さな体躯。 すぐそばにある『終わり』を目の前に、もう少しもう少しだけと強く抱き締めた。 笹川に抱き締められた形の桐島は何も言わずされるがままである。 その行為に甘えてずっとこのまま自分の腕の中に閉じ込めておきたいと思う気持ちが浮かんでは消えて、また浮かんでは消えていく。 頭では離れるべきだと理性が語りかけ、心は己の内にある矛盾に吐きそうになるも離れるべきだという。 しかし、体だけがまるで駄々っ子のように桐島を離さないのだ。 「...ごめん..少しだけ..少しだけ....」 無意識に桐島を抱き締める腕の力が強くなる。 「っ....あっ、あの...笹川くん..大丈夫ですから」 桐島が笹川の背中に腕を回しゆっくりと落ち着かせるように撫でる。 少しばかり痛そうにしているのはきっと、桐島の体に無数にある青アザや噛み痕だろうか。 頭では冷静に理解している筈なのに体は桐島を離さない。 感情は相変わらず己の胸内に広がる矛盾に気持ち悪くなりながらも耐えた。 「...ちゃんと、終わりにするから」 そう笹川が肩口で呟けば、聞いていたのだろう桐島は黙ったまま何度も笹川の背を撫でた。 撫でられる感触を受けながらも桐島を離すことができず、じっと抱き締めたままだ。 ちぐはぐな己の頭と心と体に眩暈と吐き気を覚えながらも笹川の体はしっかり桐島を抱いていた。
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