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「......ぃ」
返事が小さく聞こえたような、聞こえないような気がしたが一先ず自分の背からガサゴソと衣類を着用する音が聞こえ始めたので安堵した。
しかし今度は後ろから聞こえてくる音に聞き耳を立ててしまう。
『ああ、今は足を上げてスラックスを履いている所』だとか『カッターシャツを羽織って釦を止めようとしている所』だとか、見えない中桐島の姿を想像してしまい下半身は一向に収まらない。
「あ...あの着替えました」
「...もう少しだけ待ってて...送るから」
音が止まり声を掛けられた笹川は桐島に背を向けたまま答える。
未だ衰えない下半身の熱に嫌気がさし溜息を吐いた。
「...はあ」
不意に己の背から人が立ち上がる気配がする。
「あっ...あの..僕自分で帰れますから」
同時に聞こえてきた声に笹川は咄嗟に振り向くと、立ち上がった桐島のカッターシャツを掴む。
「?....笹川くん? 」
立ち上がった桐島が驚いたように笹川を見下ろす。
勃起したままの下半身など関係ないとばかりに膝立ちで桐島を引き止めた。
「...先生、俺が...俺が送ってくから」
喉奥から出てくる己の声に必死さを感じる。
「だから...だからもう少しだけ」
離せば全てが終わってしまうような気がして笹川は掴んでいたカッターシャツを更にギュッと握りしめた。
「ちゃんと終わりにするから...もう少しだけ」
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