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『ちゃんと、終わりにするから』と何度も桐島に伝えるのは結局のところ己の気持ちがどこか定まらずにいるからである。
このまま桐島が帰ってしまえば、二人の関係が終わってしまうと笹川は湧き上がる不安に苦しくなり、カッターシャツを握りしめる手の力が強くなった。
「...先生...頼むから」
『もう少しこのままで』と口から出ることはなく心の内だけに留まっていた。
勃起している下半身はもとい、不安が渦巻く胸の奥も熱く感じ、笹川の体を熱が支配する。
自分の体の筈なのに既に制御できなくなっているのだ。
十八年間生きてきてこんなに熱を孕んだ記憶などなく、この始末をどうつければ良いのかわからない。
見上げた先の桐島の姿や呟かれる声色、衣類を纏った匂いにまるで酔ったように身体の奥から熱くなる。
笹川は兎に角時間が過ぎるのを待とうとして桐島のカッターシャツを掴んだまま座り込んだ。
腰を下ろせば大きく口を開け深呼吸をする。
肺に空気が流れ込んでくるのを感じると口を開いた。
「先生、もう少しこのまま一緒にいてほしい....」
顔を見ずに呟けば、少しの間が訪れる。
「......わかりました。ここに居ます」
そう言うと、桐島は笹川の隣に腰を下ろした。
桐島のカッターシャツを掴んでいた為、右腕が上がったままだったのが自分の体の位置に近くなり楽になる。
隣に座られてからも笹川は桐島のカッターシャツを離すことができず握ったままである。
既にある『終わり』を目の前に少しでも桐島を感じていたいが為の行動だった。
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