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3
カーテンの隙間から漏れてくる朝日により、桐島は薄っすらと目を開けた。
もぞもぞと布団に入ったまま動く姿は、冷やりとする空気から逃げるようである。
一頻り布団の中でもぞもぞするも部屋に差し込む朝日によりゆっくりと布団から顔を出した。
『午前6時30分』
近くの時計で確認すると丁度目覚ましが音を鳴らし始めた。
耳に残る不協和音が堪らなくなり、布団からガバリと上半身を起こすと体に触れる冷たさで頭を起こされた。
寒さにより覚醒していく中で、ポツリと呟く。
「...あ.さ...」
幾分か脳は覚醒してきたものの体は動かない。
ヒーターのついていない部屋は布団から飛び出すのに勇気がいってしまい、尚更動くことに対して消極的にさせる。
冷たい空気を上半身で受けながら、下半身にその寒さを経験させる事に躊躇してしまいベッドから抜けれない。
それでも今日だって仕事には行かないといけなくて、休むわけにもいかずヒヤリとするフローリングに足を下ろした。
「っ...」
冷たさに一度足を上げてしまうが、意を決してもう一度足底をフローリングにつける。
ツンとする様な冷たさに足早にヒーターの元まで行くと電源を押した。
ヒーターが点くまで時間がかかるであろうと桐島は寒さに震えながら洗面台へと向かう。
バシャバシャと冷たい水で顔を洗う桐島は、拭き取るために顔を上げた。
取り付けられた鏡には酷い様相の自分がこちらを見ている。
更には喉仏にある噛み痕は赤くなっており、パジャマの空いた襟元から濃紺のアザも見えた。
そんな自分の姿を視覚に入れた事で、昨夜の出来事が甦った。
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