火葬場

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麻衣ちゃんが子猫をイケニエにしそこねた次の日、無事にママのお葬式が終わり最後のお別れに火葬場にやってきました。 「麻衣、ママがお空に登るところ見にいこうか」 そう言ってパパは麻衣ちゃんの手をぎゅっとにぎり外に誘いました。 6月の梅雨の晴れ間。 澄んだ青空に煙となったママがゆらゆらと天に昇っていくのを二人で眺めていると、パパが言いました。 「ママはとうとうお空に行っちゃったなぁ。麻衣、淋しいかい?」 麻衣ちゃんは、どうしてそんな当たり前の事を聞くのだろうと少し腹が立ちました。 淋しくないはずがないじゃない! そうでなかったらママを生き返らそうなんて思わないよ! と。 パパは返事もしないでプイっと頬を膨らます麻衣ちゃんの頭を優しく撫でながら、 「麻衣、今はまだ淋しいかもしれないけどね、ママはちゃんとお空の上の天国から麻衣を見守ってくれるよ。そりゃ今までみたいにお喋りしたり、お出かけしたりはできないけど…」 ママが? 見守ってくれるの? 麻衣ちゃんはパパの言葉に少し興味を持ちました。 パパは麻衣ちゃんと目線が合うようにしゃがみこんで続きを話します。 「麻衣はね、これから中学生になって高校生になって大学生になって…そのうち好きな人ができて結婚して、子供が生まれて…どんどん幸せになっていくんだ。その間もずっとママが見守ってくれる。それで麻衣がもっともっと年をとってお婆ちゃんになって大往生でやがて死ぬ時がやってくる。そうすると麻衣も天国に行くんだ。天国に行ったら麻衣の大好きな人に会えるんだけど一体誰だと思う?」 麻衣ちゃんは、まさか…まさか…! という気持ちが抑えられず、思わず笑顔になってしまいます。 そして、わくわくしながらパパに聞きました。 「もしかして…もしかして…ママ?」 「そう!大当たり!だからね今は少し淋しいかもしれないけど必ずまた会えるんだよ。ママは麻衣の事が大好きだから、天国に行った時に麻衣の話をいっぱい聞かせてって言うと思うんだ。だから麻衣はこれからたくさん食べて、たくさん遊んで、たくさん勉強して、たくさん友達を作って…長い長い麻衣の幸せな人生をママに聞かせてあげてほしいんだ」
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