ご注文どーぞ!

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ジッと母親、基、七瀬を観察する。 大人顔にはなったが、昔の面影があるのは、意志の強そうな切れ長の一重。 つり目で、凛とした立ち振る舞いが、 ちょっと近寄り難いタイプだったけど、母親になったのか、今は柔らかい印象を受ける。 年食って丸くなったんだな。 体型じゃなく、雰囲気が。 しかし、子供ちゃん。 母親似じゃねぇなぁ。 くりっとした二重まぶたに長い睫毛。 人懐っこい愛くるしい笑顔。 「似てねーなぁ。」 「フフッ。今さっき、琴絵にも言われた。 ママに似てなくて良かったねぇ~って。 本当、酷いでしょ?」 と、気にもしてないのかクスクス笑う。 あぁ、七瀬はこうやって笑うんだ。 彼女の笑う姿は見たことがない。 いつもピリッとした空気を纏っていた。 中学の頃だったらキッ!と睨まれてた筈、 なんて、思った。 ここに来たのは偶然だったのか、必然だったのか。 あまり、 昔の知り合いには会いたくなかったんだがな…………、 七瀬だったら、 七瀬だから? 意外に悪い気はしない自分がいる。 むしろ、変にドキドキしている自分が不思議だ。
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