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その姿を目にした途端、少年は畏敬の念をおぼえた。
身体を縛りつけていた恐怖心が消え失せていることに気付かないまま、少年は一種の畏敬の存在をじっと見つめ続けた。
ふと、その視線に気付いたのか――
鋭い眼差しが、ゆっくりとこちらを見遣る。
倒れ伏す骸には目もくれず、賊を葬った流れ者の魔物は少年に問う。貴様は純血なのか?と。
その言葉を聞いた瞬間少年の背筋に電撃が走った。それはもはや畏敬ではなく恐怖。少年は震えて声も出せないでいた。
その姿を見た魔物は小さく笑った。
「まだ子供ながらにしてその胆力、見事なものだな。俺の気迫を受けて震える程度で済むとは。少なくともこの賊よりかはできるようだ」
ロングコートを纏った流れ者の魔物はそう言うと血のついた長剣を振るうと鞘に納めた。そして無言のまま静かに去っていった。
そこで、少年の意識は途絶えた。
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