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――夢から覚めてもなお、エイブラットは興奮を禁じ得なかった。
また、あの夢だ。
「あぁ……」
名残惜しそうに溜息を漏らす。
同じ夢を見るのは、これでもう何度目になるだろうか――そんな疑問など、この胸の高鳴りに比べれば些細なことであった。今頃妹は何をしているのだろう。エイブラットの脳裏には妹の姿がよぎった。
窓の外。白々明けの空を一瞥してから、エイブラットは準備に取り掛かった。
もはや着慣れた親衛訓練団の制服に袖を通し、乱れや汚れがないかを隅々まで確認。最後に寝台の脇に立てかけられた木剣を腰に携える。手早く身支度を整えたエイブラットは自室を後にすると、なるべく物音を立てないよう心がけながら、寝静まった下級修練寮の廊下をそそくさと通り抜けた。
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