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暗闇から人影が浮かび上がりそれがコルブロントだとアムルシャス卿はすぐに理解した。
「おっと油断した。その娘は俺の甥の花嫁。貴様なんぞにくれる訳にはいかんな」
コルブロントは不敵な笑みを浮かべ皇女に手を伸ばしました。
その指には蒼白い炎の魔法陣が浮かび上がり皇女の足下にも同様の魔法陣が浮かび上がった。
「この魔法陣は拘束の印だ。そこから少しでも娘を動かしてみろ。お前の居場所は無くなるぞ? ふははははっ」
コルブロントは高らかに声を上げて笑うがアムルシャス卿は静かに皇女の横顔を見ていた。そして――
「なるほど、炎系の拘束魔法陣ですか。それならこうすれば解けますよ」
アムルシャス卿は腰から下げていた魔(法の)剣を鞘から引き抜いて剣先で軽く陣の一部を叩いた。すると皇女の足下にあった魔法陣は剣に吸い込まれるように消えていった。
「ば、馬鹿なッ! そんなことができるわけない!」
コルブロントは自身の魔法陣が破られたことに驚きが隠せないようで動揺していた。
コルブロントは炎の玉を創り出しアムルシャス卿と皇女目掛けてそれを投げつけた。
しかし、アムルシャス卿の剣によってそれらは全て掻き消されたのだった。
「私の剣は炎さえも喰らう。あなたの魔法は私の前では無意味です」
アムルシャス卿はそう言うと大理石で出来た広間の床を蹴りコルブロントへと瞬足の一撃を叩き込んだ。
アムルシャス卿の一閃はコルブロントの肉体を切り裂き、その雷炎を纏った斬撃は砦の窓に掛かっていたカーテンや床に敷かれていた絨毯を燃やしたのだった。
アムルシャス卿は皇女と共に砦の外へと駆け出ると既に砦は業火に包まれていた。
砦の地下からはドラゴンの虚しい叫びが木霊していた。そして一層炎の勢いが強くなったのと同時にその叫びとも捉えられる鳴き声は絶えたのだった。
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