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やおら伸び迫る、泥に汚れた手――
無力な少年からすればそれは魔手も同然だった。
頬や腕を這いずり回る得体の知れない感触から逃れようにも、猿轡と縄で締め上げられた状態では抗いようもない。
薄闇の蟠る洞窟内には、少年を品定めする下等な魔物どもの下卑た笑いだけが響き渡る。
どうして、こんな目に遭わなければならないのだろうか。
何も悪いことはしていない。強いて言うなら自身の体に人間の血が混ざっていることくらいだ。だが、それは分かるわけが無い。
少年は怯えながら、我が身の不運を呪った。
これから自分は、一体どうなってしまうのだろうか。
奴隷として売り飛ばされ、死ぬまで働かされるのだろうか……いや、それはない。恐らく嬲り殺されるだけだ。
何処とも知れない場所で、見知らぬ者達に蔑まれながら。
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