親衛訓練団

4/32
前へ
/36ページ
次へ
助けを呼ぶことはおろか、逃げることもままならない。もし下手なことをして、彼らの気を損ねでもしたら――それこそ殺される。 手違いで子供一人を殺めてしまったところで、彼らは何とも思わないだろう。また新たに子供を攫ってくればいいだけの話なのだから。 無駄なのだ。 どう足掻いたところで助からない。 少年が諦めて目を閉じかけた…そのとき。 斬閃が薄闇を切り裂いた。 そこから先は、あまり憶えていない。 こちらを見下ろしていた彼らが血相を変え、険しい顔になった気がする…… そうして一斉に洞窟の入口へと目を向けて、腰に携えた短剣を抜いた気がする。 何が起ころうとしているのか、それすら判然としないまま――少年は小さな身体を更に縮こまらせ、強く目を閉じた。せめて自分の身だけは守ろうという半ば無意識の行動であった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加