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深夜。
「暗いので、気を付けてください」
カンテラを携えたクレアとグラントは、森の中を、ホテルとは反対の方向へ歩いて行く。
道なき道のようだが、何か目印があるのか、クレアは迷いなく進んでいく。
「洞窟です。ここから、下り坂になっています」
グラントは、興味深そうに洞窟の入口をカンテラで照らす。
大人一人が通れるかどうかくらいの裂け目が岩の間に開いている。
足場の悪さに、歩みを緩めて進んでいくと、洞窟の奥から、水の流れる音が聞こえてきた。
しばらく歩くと、急に、カンテラに照らし出される岩肌がきえた。
「着きました」
いままで周囲の岩壁に反響していたクレアの声が、すっと空間のなかの溶けていった。
カンテラの照らす範囲には、何もない。
「クレア、ここは、、、」
グラントが、尋ねようとしたその時、どこかに裂け目があるのか、月の光が差し込み、辺りの情景を浮かび上がらせた。
「なんてことだ」
グラントは、そうつぶやき、後は絶句する。
それまではグラントの頭ぎりぎりにあった岩肌が、はるか高みに退き、ドーム状の空間が現れていた。
その最奥には、一筋の滝が月光に照らし出されて、きらきらと輝いている。
月の光と自然の岩、流れ落ちる水の作り出す、宮殿だった。
「来ました」
洞窟に目を奪われるグラントに、言葉短くクレアが告げた。
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