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「もういいよ」 打って変わった明るい声で、グラントは背後の暗闇にいるクレアに声を掛けた。 「ちょっと、ボートを照らしてくれるかい?」 よいしょっと掛け声をかえて、意識を失った男をかかえあげて、ボートに移す。 「ああ、ボートまで歩かせるんだった」 無造作に男をボートに放り投げながら、ぼやいた。 「何をしたんですか?」 クレアは、何があったのか理解できないといった顔をしている。 「催眠術だよ。長生きしてると、いろんな特技が身についてね」 グラントは、片目を閉じて、にやりと笑った。 「さて、この船を海まで戻さなくては」 考え込んだグラントの横で、カンテラを地面に置いたクレアがそっと言った。 「それは、私が」 言いながら、クレアはするりとドレスを脱いだ。 そのまま、水の中に入っていく、 その手と足の先が、ひらひらと揺れる優雅なひれに変化している。カンテラの光の中で、全身が青い海の色のような鱗に覆われているのが見えた。 「滝の流れ落ちる裏に、外へ出られる割れ目があります。そこから、海を見ていてください。あなたが守ってくださったものを、お見せします」 それだけいうと、クレアはボートを押して、水中に消えていった
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