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グラントは、ぎりぎり通れる割れ目を見つけ、洞窟の外へと出た。
ちょうど目の前に月が輝いている。
その光が落ちるあたりで、グラントに向かって手を振っている者がいる。
その手の主が水の中に沈んだかと思うと、水中から続けざまに4人の人影が空中に飛び出し、ひらりと体をひねると、また水中に消えた。
その足先は、人間のものとは違い、長く尾を引くひれのようだった。
「なんと、なんと、人魚の島だったのか。エドめ、一番の秘密は明かさずじまいだったんだな」
グラントは、お互いの秘密を打ち明けあったときの、エドの顔を思い出した。なんともうれしそうな顔をしていたのだ。
その心の内を代弁するならば、長生きの君にも、まだまだ驚くことがこの世にあるんだよ、といったところか。クレアの正体を知った時のグラントの顔を、思い描いていたのかもしれない。
「人魚の鱗だったとはね」
懐から、海の雫を取り出して、月にかざす。
月の光に、きらりと輝く海の雫は、どこまでも深い青色をしている。
それを握りしめて、グラントは、日が昇るまで人魚が消えた海を眺めていた。
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