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大陸の最南端のサルージャは、冬でも温暖な気候に恵まれ、鉄道が発達したここ数年、北部の富裕層に殊に人気の避寒地だ。 そして、引き潮の時にだけ大陸側と道のできる小さな島、ブルーノ島には、知る人ぞ知る、隠れ家的なホテルがあった。 そのホテルについて語るとき、滞在中の心地よさや島の南国独特の雰囲気と共に、必ず人々の口に上るのが、麗しい女主人の事だった。 曰く、月の光の結晶のような美貌。 曰く、現実を忘れさせ、夢の中へと誘うような歌声。 さらには、数十年前から変わらぬと言われるその容姿。 そう言った噂は、尾ひれがついて広まりつつ、南国のひと時のバカンスに、さらなる興趣を加えていた。
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