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グラントは、テラスを突っ切って、クレアの元へ駆け寄った。
「こんな所に座り込んでどうしたんだい?」
顔を覗き込めば、ひどく青ざめている。
今朝、グラントが、とてもよく似合うと褒めた、菫色のドレスの膝の上に、コバルトブルーの魚が載っていた。
「あぁ、この魚は、ブルームーンフィッシュじゃあないかい?」
グラントの言葉に、放心していたようなクレアが、振りむいた。
「グラント様、ご存じなんですか?あまり知られていない魚なんですけど」
その声には、抑えてはいたけれど、隠しきれない不審の響きがあった。
それに気づかないのか、グラントは、周囲へ視線をむける。そこには、同じ魚が何匹も、腹をみせて波間に打ち上げられている。
「どうやら、海の雫だけをはぎ取って、捨てられたようだね」
「それもご存じなんですね。」
クレアが、明らかに警戒した様子で立ち上がり、一歩後ずさった。
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