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食事が終わると、皆テーブルを離れ思い思いの場所で談笑している。
大人達はアルコールを片手にソファに、友世たち高校生は、座るところがないので、絨毯にぺたりとじかに座っている。飲んでいるのはペリエの炭酸水だ。
台所でなにか貰っていたらしいクロも、いつの間にかリビングにやってきて、友世の傍らに寝そべっている。
「『煉瓦亭』のオーナーが、友世の叔父さんだったなんて知らなかったわ。あんなに恰好のいい叔父さんがいるって、どうして、もっと早くに教えてくれないのよ」
暁子が言った。小柄で華奢な暁子には、ミニスカートにニーハイソックスという某アイドルのような格好よく似合う。こう見えても学年トップの成績の持ち主で、智則と友世は、いつもテスト前はお世話になっているのだ。
「叔父さんは独身?」
「うん。そうだけど。前にお母さんがね、叔父さんはたらしだって言ってたわ。たらしって何?」
友世の質問には答えずに、暁子は一人で残念がっている。
「そっかぁ。たらしかぁ。高校生じゃあだめよねぇ」
「おまえさ、同学年の男子は対象じゃないの?」
「お子様はオコトワリ」
「なんだ かなあ。見方かえたら、いいヤツがいっぱいいるだろう」
「心当たりがあるの」
友世が質問すると、
「いやあ、ええと単なる一般論だよ」
と、智則は顔を赤らめて答えた。
「林君は友世と同じ道場なんでしょう。友世って強いの?」
「結構すごい」
友世はいたずらっぽい顔をして智則を見ている。
「かなりすごいよ」
智則は正直に訂正した。
「どっちが強いの?やっぱり林君?」
「えっと、春日のほうかな」
若干声が小さくなる。
「へえ、そうなんだ」
暁子の追及がそこで終わったので、智則はほっとした。
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