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しゃべっている三人に浅木が声をかけた。
「そろそろお開きだそうですよ。春日さん、今日はありがとう。ええと三澤さんでしたか。家はどちらです?」
「林君と同じマンションです」
「それなら安心だ。林君、ちゃんと三澤さんを送ってあげなさいよ」
「はい」
「今度の公開練習試合、二人で剣舞をやってくれるかな。序の舞の易しいやつでいいから」
「いいですよ」
智則が即答した。
「あの、私もやらないとだめですか」
友世は型が苦手なのである。次に手足をどう動かすか考えていると、たちまち動きが止ってしまう。『序の舞』は去年も苦労して覚えたのに、ほとんど動きを忘れている。
「そりゃあ、二人で舞わないと。林君一人だと、華がないもの。それにさ、二人の剣舞を見た後は老若男女、入門者が殺到するんだよ」
浅木は古武士のような風貌をしているが、なかなか経営のセンスがある。今時分、剣道の道場が盛況なのも、その経営センスがなせる業なのだ。
「わかりました。練習しておきます」
「道場の鍵、どちらに預けておこうか」
「私が預かります。問題があるのは私のほうだもの」
「林君、春日さんと一緒に練習してあげてくださいね」
「はい。任せてください」
智則が頼もしく請け負った。
「練習したいときは、いつでも連絡くれよ」
「うん、ありがとう」
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