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すると、抱かれていた一匹の小さな子犬が、飼い主のひざから飛び降りて、トコトコとその大きな犬に走り寄って行った。小さな尾を千切れんばかりに振っている。
待合室に、一瞬緊張が走った。
が、結末は意外なものだった。大きな犬は身体を伏せて体高を低くすると、子犬を優しく舐めはじめたのである。鋭い瞳はいつの間にか柔らかい光を帯びている。
子犬は大喜びで、大きな犬にじゃれついている。
「あの、すみません。うちのコが失礼しました」
小太りの人の良さそうな中年女性が頭を下げた。
「いいえ。お気になさらないで」
友世はにっこりと微笑んだ。
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