闇の継承者

出会い

　診察室に入ると、クロは友世の腰のあたりまである診察台にふわりと飛び乗った。
　大きな犬なのに、体重をほとんど感じさせないような跳躍だ。診察台に乗ると、すぐに「ふせ」の体勢をとり、微動だにしない。
「クロは賢いなあ。長年獣医をやってるけど、こんな犬見たことがないよ」
　佐藤は言った。クロの身体を丁寧に調べて手際よく注射をした。
「今年で３歳か。去年より、ずいぶん体つきがしっかりしてきたね。」
「先生、クロ、まだ大きくなる？」
「だいたいこのくらいで成長は止まるよ。大型犬は成犬になるまで２、３年かかるんだ」
「そうなの。拾った犬が、こんなに大きくなるなんて想像してなかったから、びっくりよ」
　友世は眼をくりくりさせながら言った。