ストーカー

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「きゃああああ!」 「うわああああああ!」 二人は悲鳴をあげた。 終わった、俺の人生終わった。 俺は二人の男女の前で下半身丸出しで、泉先生のパジャマを握り締めていたのだ。 つい数時間前のこと。 「今日こそは、原稿取ってこいよ。逃げられたら承知しないからな!」  編集長に凄まれて、俺は鉄砲玉のように会社を後にした。 逃げられたら承知しないって、電話には出ないし、メールは無視、ラインに至っては既読にすらならない。 どうやって原稿を回収すればいいのだろうと、俺は途方に暮れた。  締め切り前になると、いつも泉先生は行方不明になってしまう。現実逃避だ。 「お前は、泉先生に甘すぎるんだ。」 と、編集長は言うけど、惚れた弱みというか、俺は泉先生には強く言えないところがある。担当者失格と言われても仕方がないが、一目惚れだった。会った瞬間、笑顔にやられた。なんて可愛い人だろうと思ったのだ。  小説家なんて、偏屈なオヤジか爺さんが関の山だと思っていたが、「そのミス小説新人賞」を獲得した泉先生は、小悪魔的な魅力を持ったとても魅力的な人だった。モロ、俺のドストライク!この気持ちを悟られまいと、努力しているが、ついその人を前にすると、あがってしまって、まるで恋する中学生のように上手くしゃべることができなくなってしまうのだ。  無駄とは思いつつも、俺は泉先生のマンションへと向かった。マンションと言っても、形ばかりでエントランスも何も無い、簡素な作りのマンションなので、俺はまっすぐに泉先生の部屋へと向かった。内心、もしかしたら、泉先生が出迎えてくれるかもという淡い期待を抱いていたが、やはりインターホンを押しても、何の反応も無かった。  居留守かもな。一応、ドアをノックして声をかけた。 「泉先生、僕です。神谷です。いらっしゃったら返事してください。」 声をかけたが返事は無かった。諦めて帰ろうとしたが、編集長の鬼のような顔が浮かんで、もう一度声をかけて、ドアノブを回してみた。
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