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2人の子供が荒れ地に林立する白蟻の巣である、蟻塚の土で出来た堅い柱の根元を掘っている。
根元を掘ると、白蟻が巣を修復しようと溢れ出てきた。
子供達はその溢れ出てくる白蟻を掬い、袋に詰めていく。
壊している白蟻の巣はこれが最初では無いようで、彼らの脇には白蟻で満杯になった袋が4つ転がっていた。
無心に白蟻を袋に詰めている子供達に、何かで満杯になった大きな袋を背負い、腰に鉈をぶら下げ片手に弓と矢を持った老人が近寄り声をかける。
「そろそろ日が暮れる、帰るぞ」
2人の子供の内、身体が大きい方が顔を上げ返事を返す。
「もう少しでこの袋も満杯になるから、ちょっと待って」
老人はその返事に無言で頷き、転がっている袋の1つを空いている手で拾う。
暫くすると袋が満杯になったのか子供達は立ち上がった。
2人は両手に1つずつ袋を持ち、先に歩き出した老人の後ろを歩く。
「木の葉沢山採れたみたいだね」
子供の1人が前を歩く老人に声をかけた。
「ああ、部落の皆に分けてあげられるくらい採集して来た」
もう1人の子供が老人に質問する。
「ねえ爺ちゃん。
婆ちゃんに聞いたんだけど、昔はすごく高い木が生い茂っていたって本当かい?」
「本当だ。
蟻塚の数倍以上ある木々が生い茂っていた。
だが、戦争でばらまかれた放射能の影響で、儂らより少し高い所までしか伸びなくなってしまった。
その爺ちゃんが子供の頃起こった戦争で、生態型が滅茶苦茶になり、放射能に順応した物しか生き残れなかった、儂らを含めてな」
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