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3人は身を寄せ合うように建っている、20軒ほどの家の1つに入って行く。
「「「ただいま」」」
「「お帰りなさい」」
家の中に入って来た彼らを、老婆と子供達の母親が迎える。
「家もそうだが、カレーの匂いが部落中の家々から漂って来るけど、何処で見つけたのだ?」
老人の問いかけに老婆が答えた。
「川向こうの、数年前に核シェルターから出て来た奴らがいたでしょ。
あいつらを最近見かけないから見に行ったんだわ、したら皆死んでいたの。
だから、部落に残っていた女子供総出で行ってあいつらの塒を物色したら、出てくるわ、出てくるわ、レトルト食品や缶詰だけでなく、カレーのルーや乾燥野菜にお肉まで出てきたのよ。
全部頂いて来たわ。
それで今日は部落中がカレーになったって訳」
「そうか、こっちも大漁だった」
老人は白蟻が詰まった袋を持ち上げる。
「そっちは、ごはんを食べてから炒りましょう。
大鍋は今使っているから」
夜警の当番に出ている子供達の父親を除く5人は、粗末な卓袱台を囲む。
「「「「「いただきます!」」」」」
モグモグモグモグプチプチモグモグモグモグ
老人2人は懐かしい平和だった頃を思いだし、煎じた木の葉のお茶で喉を潤しながら。
パクパクパクプチプチパクパクパク
2人の子供と母親は、初めて食べるカレーに顔に笑みを浮かべながら。
バクバクバクバクプチプチバクバクバクバク
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