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「ほんとに、大丈夫なんで気にし」
「あっタクシー来ましたよ」
私の声は城木さんの声に消されタクシーが目の前にやってくる。
城木さん、私の話を聞いて。
「高畑さん、今日はありがとうございました。葛城さん、また明日ね。」
城木さんは笑顔で私の背中を優しく押し、タクシーに乗せた。
後から高畑さんも乗り込む。
窓の向こうで爽やかな笑顔の城木さんが手を振っていた。
そして、行き先を告げられたタクシーが出発する。
もう、逃げ場はない……
沈黙が流れるタクシー。
気まずい雰囲気。
私はその雰囲気に耐えられなくなり、窓の外を見た。
沢山の車のライトとたまに響くクラクション。それにビル街の光と楽しそうな人の群れ。
特に話題になるような物もなく、私は緊張しながら窓の外をずっと眺めていた。
すると。
膝に置かれた私の左手に温かいものが重なってくる。
見ると高畑さんの手。
私は驚いて高畑さんの顔を見る。
高畑さんは正面を見ていたが、スッとこっちを見た。
暗くてよく見えなかったけど微笑んでるように見える。
「…もう、今日はどうしたんですか?」
高畑さんは、私の耳元までそっと近づき囁く。
「言っただろ?キミを口説くんだって」
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