正しいタイムマシンの使い方

9/9
前へ
/9ページ
次へ
―未来4―  その日の深夜、自宅のドアが開く音がして目が覚めた。まさか泥棒!? 慌てて電気を点けると、隣に嘉彦の姿がないことに気づく。 「ただいま」  そう言って部屋に入って来たのは、嘉彦だった。私は安心して、ホッと息をつく。 「もう、泥棒かと思ってびっくりしたんだから。こんな夜中にどこ行ってたの?」 「命を一つ救ってきただけだよ」  晴れやかな笑顔でそんな台詞を吐く。適当なことを言ってごまかすつもりだろうか。 「あっ、首から血が出てるじゃない! 何があったの」  私は救急箱から消毒液と絆創膏を取り出す。 「ちょっと、女子高生に引っかかれて……」   「女子高生って……。まさか、浮気じゃないでしょうね」  彼の首に絆創膏を貼りながら、私は頬を膨らませる。もちろん、彼が浮気なんてしないことを信じているが故の冗談だ。 「さあ、どうかな。ちょっと気になる女の子のところへ行っていたのは事実だけど、若菜以外の人を好きになることが浮気なら、僕は浮気はしていない」 「はぁ?」  彼の話を聞けば聞くほど、私は混乱していく。これだから理系は困るのだ。 「とにかく、僕が好きなのは若菜だけだよ。今も、これからも」  私の目を見つめて、彼は堂々と言った。そんな一言で、他のことはどうでもよくなってしまうのだから、私もちょろい女だ。 「もう、バカ……」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加