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―未来4―
その日の深夜、自宅のドアが開く音がして目が覚めた。まさか泥棒!? 慌てて電気を点けると、隣に嘉彦の姿がないことに気づく。
「ただいま」
そう言って部屋に入って来たのは、嘉彦だった。私は安心して、ホッと息をつく。
「もう、泥棒かと思ってびっくりしたんだから。こんな夜中にどこ行ってたの?」
「命を一つ救ってきただけだよ」
晴れやかな笑顔でそんな台詞を吐く。適当なことを言ってごまかすつもりだろうか。
「あっ、首から血が出てるじゃない! 何があったの」
私は救急箱から消毒液と絆創膏を取り出す。
「ちょっと、女子高生に引っかかれて……」
「女子高生って……。まさか、浮気じゃないでしょうね」
彼の首に絆創膏を貼りながら、私は頬を膨らませる。もちろん、彼が浮気なんてしないことを信じているが故の冗談だ。
「さあ、どうかな。ちょっと気になる女の子のところへ行っていたのは事実だけど、若菜以外の人を好きになることが浮気なら、僕は浮気はしていない」
「はぁ?」
彼の話を聞けば聞くほど、私は混乱していく。これだから理系は困るのだ。
「とにかく、僕が好きなのは若菜だけだよ。今も、これからも」
私の目を見つめて、彼は堂々と言った。そんな一言で、他のことはどうでもよくなってしまうのだから、私もちょろい女だ。
「もう、バカ……」
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