村雨勝 1st STAGE

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村雨勝 1st STAGE

力なんて、くだらない。 村雨勝、高校2年生。 不良でもなんでもない真面目な学生だが、クラスメイトからは遠巻きにされている。 理由1。空手、柔道、剣道の有段者であること。 理由2。180cm72kgのガタイの良さ。 そして、最大の理由3。この高校1番の問題児、緒形傑と何かと問題を起こすから。 「おいカツ、ちょっとツラ貸せよ」 今日も、緒形は取り巻きを連れて勝のクラスにやってきた。授業中でもお構いなしだ。 「先生、10分ほど退席してもいいですか」 「わかった、頼むから穏便にな」 勝も教師も、無視しても無駄だとわかっているので、できるだけ正規の手順を踏んだ。 「カツ、てめえタバコのことチクッたろ」 しょうもない言いがかりに、勝はうんざりした。 「校舎裏まできて、用件はそれだけか?」 「話を逸らすんじゃねえよ」 「あれだけ目立つように吸ってりゃ、チクる必要もねえ」 勝は、早く本題に入ればいいのに、とイライラする。 「また調子に乗ってるな。おい、お前ら」 緒形は顎で取り巻きに合図した。 「お前は結局、何かと理由をつけて俺を痛めつけたいだけだろ」 「お前のその何もかも見透かしたような態度がムカつくんだよ!」 3人の取り巻きが一斉に飛びかかってくる。羽交い締めにされ、頬を一発殴られた。 振りほどけなかったわけではない。勝は必ず最初に一発殴られることにしているのだ。 「ここからは正当防衛だからな」 まず、落ち葉の積もっている所を探し、羽交い締めにしている取り巻きを投げて転がす。 別の取り巻きが殴りかかってくるので、腕を軽くはたく。 だいぶ力を抜いたのだが、取り巻きは痛みに呻いて後ずさりした。 「なあ、ケツ。いいかげん目を覚ませよ」 勝は手を止め、緒方をじっと見る。しかし、そこで体に衝撃が走った。 力が抜け、膝が勝手に曲がる。 「効くだろ?それ。親父の会社の商品なんだよ」 かろうじて首をひねり後ろを見ると、取り巻きの一人がスタンガンを持っていた。 「……いろんな手を考えるな」 「これも俺の力のうちだ」 緒方はそう言うと、無防備な勝を殴った。 かろうじて体を丸めて防御したが、衝撃で飛ばされ、校舎の壁にぶつかった。 「行くぞ」 満足したのか、緒方は取り巻きを連れて去っていった。 「本当に、救えないやつ」 勝はため息をつき、早く授業に戻らないと、とぼんやり思った。
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