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それを悪いと思ってないし、敷かれたレールの上を歩けばつらいことにはならないことを知ってる。
「あ、チンケな娘の執事が」
「ああ。咲ちゃんの執事くんだね。会社に迎えにきたんだ―――」
次の瞬間には固まった。
咲ちゃんが執事くんに泣きついたのが見えた。
執事くんの胸で大粒の涙を溢す姿に何故か胸が痛んだ。
「お兄様?」
「あ、うん。咲ちゃんでも泣くんだね」
「お兄様、そんなことじゃなくてあのチンケな娘ったら使用人といちゃついて」
「……あ、そうだね」
絶対に弱音を吐かない咲ちゃんがあの執事くんの前でなら泣くんだ。
あの執事くんの前でなら―――
主が使用人と恋に落ちるなんて、漫画じゃあるまいし許されない。
それなのに……
ふたりが寄り添って、その執事くんが咲ちゃんの背中を優しく抱いてるそれを見てるだけで息が出来ない……
なんだ?
ドキドキと音がする。
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