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しかし――、
「……?」
しばらく待っても何ごとも起こらない。
ふと顔をあげると、
「――!」
目の前に男がいた。
さっき自分たちが入ってきた玄関のドアの辺り。
安全確認はもう終わったはずの、めちゃくちゃになった廊下のその向こうに――。
かつては玄関ドアのあった場所に、男が立っていた。
今ここにいるメンバーの全員が、フル装備の上、銃火器を所持している戦場のスタイルだ。
だがそんな中、ひとりだけ高価なイタリア製のスーツを身につけ、まるでこれからデートだと言われても納得してしまいそうな格好で……。
この男は――、
「ターゲット!」
リーダーはすぐにその正体に気づくが、男はこの無粋な侵入者たちに何も言わず、ただ無造作に数個のそれを投げて寄越した。
チームの目の前にころころと転がってきたソレは、今度こそ間違いなく、
――手榴弾――
逃げようとするが、すべては遅い。
一瞬のうちに辺りは閃光に包まれ、凄まじい爆風が豪華だったリビングをめちゃくちゃにする。
その部屋にだけ、まるで太陽でも出現したかのような眩しい光と炎の中、有坂龍一は泰然とその場を後にする。
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