Act.1 

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しかし――、 「……?」 しばらく待っても何ごとも起こらない。 ふと顔をあげると、 「――!」 目の前に男がいた。 さっき自分たちが入ってきた玄関のドアの辺り。 安全確認はもう終わったはずの、めちゃくちゃになった廊下のその向こうに――。 かつては玄関ドアのあった場所に、男が立っていた。 今ここにいるメンバーの全員が、フル装備の上、銃火器を所持している戦場のスタイルだ。 だがそんな中、ひとりだけ高価なイタリア製のスーツを身につけ、まるでこれからデートだと言われても納得してしまいそうな格好で……。 この男は――、 「ターゲット!」 リーダーはすぐにその正体に気づくが、男はこの無粋な侵入者たちに何も言わず、ただ無造作に数個のそれを投げて寄越した。 チームの目の前にころころと転がってきたソレは、今度こそ間違いなく、 ――手榴弾―― 逃げようとするが、すべては遅い。 一瞬のうちに辺りは閃光に包まれ、凄まじい爆風が豪華だったリビングをめちゃくちゃにする。 その部屋にだけ、まるで太陽でも出現したかのような眩しい光と炎の中、有坂龍一は泰然とその場を後にする。
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