Act.1 

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何ごとが起こったのかと、45階を見上げて集まってくる野次馬の間を、ゆっくりとした足取りですり抜けて、龍一は愛車のシートに尻をすべり込ませる。 車を発進させながら、電話を手にとった。 その相手は、 「おお、珍しいな。2ヶ月ぶりか? また魚でも降るんじゃねーのか」 時間は深夜だが、コール半分で繋がった先は秋場高広。 世界広しと言えど、龍一相手にこんな物言いが出来る男はふたりといない。 しかし龍一は高広の皮肉を、ふと鼻でせせら笑って、 「呑気なやつだな。もうパーティは始まっているぞ」 高広はうんざりしたと小さな息をつく。 「知ってるよ。招待状もなく招かれざる客が、こっちにもお出ましだ」 龍一は、 「郵便事情が悪いせいじゃないか? そんな田舎に引っ込むからだ」 言いながら、ハンドルを思いきり切った。 後輪をロックさせてスピンターンしながら、車の鼻面を中央分離帯の隙間に突っ込ませる。 車体は分離帯の僅かな間をすり抜けて、反対側の車線へと滑り込んだ。 間髪いれず今来た方向に向けてアクセルを踏み込めば、分離帯を越えられなかった追跡者のヘッドライトが、龍一のルームミラーに悔しげに映っている。
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