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倒れている男たちを、龍一はまるで割れてしまったグラスをどうしようかと悩む目つきで眺めやる。
すると侵入者たちの肩の無線機から、通信が入ってきた。
「ユニット1、応答せよ。ユニット1」
ユニット1があるのなら、ユニット2も3もあるのだろう。
今ごろ、応えない通信機にやきもきしながら、エレベーターホールで群れでもなしているのかもしれない。
龍一はますますうんざりしながら、いま回り込んできたばかりの、バルコニーの方向に目をやる。
この部屋を狙うなら、2キロ先のビルの屋上からしかないから、よっぽどの腕のスナイパーでもいなければ、狙撃の心配はない。
だからといって、地上45階からのフリークライミングは、想像するだけで億劫な気分になってくる。
可能だけど面倒くさい。
龍一は息をついて逃走を諦め、招かれざる客を正面玄関で出迎える準備を開始する。
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