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1日目
次の日、いつものように駅に行くと彼女はいなかった。まあ誰もいない休憩室が僕の日常であり、誰かがいることが非日常なのだ。僕は休憩室に入り、本を開く。ここで小説を読むのが日課のようになってどれくらい経つのだろう。この時間のために生きてるようなもんだ。ふいに休憩室の扉の開く音がする。視線を本から扉の方に向けると昨日の彼女が立っていた。昨日は彼女が微笑んでくれたから今日は僕から微笑んでみよう。視線を彼女に向けると、彼女は僕に向かって微笑んだ。それにつられて僕も微笑む。彼女はとても柔らかい雰囲気を持った人だ。綺麗な黒髪が肩甲骨のあたりまで伸びている。服装は昨日もそうだがワンピース。それも真っ白の。足元は控えめな黒のヒールを履いている。顔は美人。薄すぎず、かつ濃いすぎず。そんな言葉がしっくりくるようなメイクをしている。はっきり言おう。とても綺麗な人であると。
歳はおそらく同じくらい。昨日会ったばかりの女性に声をかける勇気が欲しい。
彼女は昨日と同じ、僕の1つ隣の椅子に座って本を開く。横目にそれを見ると、僕の好きな作者の本だった。声をかけたい、その作者の話をしたい。ここで引いては男がすたる。僕は椅子から立ち上がり、休憩室にある自動販売機に向かう。そこでコーヒーとお茶を買い、彼女にお茶を渡した。
突然の出来事に彼女は目を丸くしてこちらを見つめる。一度は手を顔を前で横に振り、貰えないと訴えてきたが、僕も引かなかった。5分くらい経っただろうか。彼女はようやくお茶を受け取り、にこりと微笑んだ。
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