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「僕もだよ!なかなかこの作者の本を読んでいる人いなくてさ!」
さらに彼女はメモ帳にどんどん文字を書き込んでいく。
「私、眠る兎シリーズが特に好きで、あのシリーズなら何でも聞いてください!」
「そのシリーズ、僕も大好きだ!いいよね、特に最後の兎がさ!」
「あの名言ですよね!!」
彼女の文字を書くては止まらない。そんなに文字を早く描ける人初めて見たよ。
ふと手が止まり、恐る恐る書いていたページを僕に見せる。
「なんで何も聞かないんですか?」
恐らくこのやりとりの方法についてなのだろうと察しはつく。僕もさすがに大学生だ。筆談が必要であり、しかし、僕の言葉に対しての答えを書き込んでいる。それはつまり1つしかないだろう。
「別に理由はないよ」
恐らく彼女は声が出せない。だからこのやりとりの仕方をするしかないのだろう。
「ありがとうございます」
彼女が開くページにそう書いてあった。
その時、遠くから電車の走る音が聞こえてきた。今日は時間が来てしまったようだ。
「じゃあ僕は行くから」
「また明日です」
そう書かれたメモ帳。そうか明日も会えるのか。心がウキウキとした。
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