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「警察から電話があったの。病院にいるから迎えに来てほしいって」
「えぇっ!」
驚いて克己のモノを強く引っ張ってしまう。
「いたっ!」克己が大きな声をあげた。
「誰かいるの?」
電話の向こうの声が、何かを探るように沈んだ。
「い、いないわよ。テレビの音よ。それで、お母さんが迎えに行くんでしょ?」
「まだ、パートの時間なのよ」
「娘の一大事じゃないの。行かないと」
これからいいところなので、邪魔されたくなかった。
「穂寿美、行ってよ。いつも遊んでいるでしょ。
それに、警察の前の病院なのよ。マンションからなら、すぐじゃない」
母親の声が1オクターブあがった。絶対にひかないときの声だ。
「わかったぁ。行くわよ」
「よろしくね。おいしいお弁当買って帰るから、あなたも一緒に食べなさい」
「私は……」セックスのために焼肉を食べたとは言えなかった。
ツー、とせっかちな母親が電話を切った。
「カッチャン、ごめん。私、行かなくちゃ」
穂寿美は克己の身体を押しのけて抜け出すと、焼肉の臭いのついていない服を出した。
「えぇー、ひどいな」
克己は不満を言いながらも身支度を整え、穂寿美と一緒に部屋を出る。
「今度、借りは返すから。またね」
車に乗り込み、克己に手を振った。
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