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千穂理がシャワーを使っている間に、母親の愛川香穂が帰宅した。
「どうなの?」
開口一番、抽象的な質問。
「大丈夫よ。小さな痣があるだけらしいわ」
「らしいって。姉なのに、無関心なのね」
香穂は非難するように言った。
「話題にしたら思い出すでしょ。黙っていたほうがいいのよ」
「そうなの……」
穂寿美の説明に納得したように見えた香穂だが、
千穂理がシャワーを終えて出てくると「見せてごらん」とつかまえた。
喉元に二つ。首の側面に六つの痣があった。
「ひどいわねぇ」
言ったのは穂寿美だ。
「もういいでしょ。4、5日で全然わからなくなるって医者も言っていたわ。
なんだか疲れたから、休むわね」
「大丈夫?」
香穂が顔を曇らせる。
「薬をもらってきたの。睡眠薬。明日は会社を休むし、ゆっくり寝させて」
千穂理は逃げるように、2階の自分の部屋に行った。
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