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特に話す事もなく沈黙が流れる。
誘った事を後悔している自分がいる。
就業時間が過ぎているから帰って行く人も多くその流れを何となく見ていた
──葉沼…今日は早く上がれたんだな
カフェスペースの横を通り過ぎていこうとする横顔
こちらを向いた視線とぶつかると中尾さんに笑顔を向け入ってきた。
「中尾さん、江藤さん、お疲れさまです」
かけられた声に慌てて立ち上がってお疲れさまです。と頭を下げる
「ふふっ…そんな緊張しないで。座って。はい、どぉぞ」
チョコレートを掌に乗せられ戸惑う中尾さんを笑った。
「何か飲む?」
葉沼にもう少しここにいて欲しくて声をかけてみる
葉沼は中尾さんを見て微笑むと、じゃあ飲もうかな。と自販機に向かった。
無糖の紅茶を持って中尾さんの隣に座ると
「この間はお疲れさま。疲れなかった?」
軽く覗き込み中尾さんと視線を合わせながら柔らかく微笑む葉沼
葉沼の持つ独特な雰囲気は微笑むだけで相手を和ませる
その雰囲気に触れ大丈夫ですと、頬を薄らと染めてはにかむ中尾さん
──俺にはできないな…
「本当に?咲希も佳那ちゃんも元気だから中尾さん困ったかな?って思ってたから良かった。大丈夫だったら又行こうね。」
はい。としか答えられない中尾さんに、ふふっ、そんなに緊張しないで?と更に安心させるような笑顔を向けて、少しづつ話しを引き出していく。
俯いていた顔が上がって、笑顔が増えて中尾さんからも話しかけていくようになる。
終業後明かりの落とされたカフェスペース内に穏やかな空気が流れ始め息をついた。
立ち上がり2人を振り返る
「先に戻るけど、中尾さんはもう少しゆっくりしてきな…葉沼、中尾さん後で連れてきて」
「わかりました」
顔を見合わせお互い小さく頷くと俺は先に部署に戻った。
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